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マツクルライトノベル『蝶の沓』61夜

第7章『跡』61夜



20時にお店に入ると、畠さんにはすぐに支度してきますと伝えて、控室へ急いだ。
凜花さんはもう待機フロアにいて、私を見ると、自分の持っているケータイを指差した。
その意味がわかって、私はすぐに控室で自分のケータイを開いた。
凜花さんからメールが来ていた。

『マジで、昨日はごめんね。話したいことあるから、明日、あたしの会社終りに会える?』

私はすぐに

『大丈夫です!私も凜花さんと話したいから。仕事終わったら連絡ください』

と打ち込んだ。
それから、胸のラインがビーズで縁取られた白いドレスに着替え、凜花さんからもらった銀色のハイヒールを履こうとしたら、あるべきところに、それはなかった。
控室の隅から隅まで探しても見つからずに、ゴミ箱を探したら、ハイヒールは出てきた。
まみりん。その名がすぐに浮かんだ。
上履き隠すとか、そんなの、中学のころにはよくあったから、屁とも思わないけど、凜花さんからもらったハイヒールをよりにもよってゴミ箱に投げ入れたのは許せない。
でも、今はテーブルで待っている畠さんのところに急がなくちゃ。
同伴してくれて、今も私の支度ができるのを待ってくれている。
私は何食わぬ顔で、店内へ戻って畠さんの隣に座った。

「ちょっと控室でなくしものしちゃって、探してたら遅くなってしまいましたごめんなさい」

私は素直に謝る。

「なくしものってなに?」

と畠さんに言われ、正直に靴がゴミ箱に捨てられてたなんて話す訳にも行かなくて、畠さんが可愛いと言ってくれたリップグロスです、とウソをついた。

「でも、すぐに見つかりました。ほら、ついてるでしょ」

と私は目を閉じて唇を突きだす。

「お店の中だよ、瑠璃果ちゃん」

と畠さんが笑う。

ああ、畠さんが笑うだけで、さっきのハイヒールのことなんてどうでもよくなってしまう。どうでもよくないんだけど。
この先、イジメみたいのがひどくなったら、どうしよう。
やっと『キモ写メ鈴木』の一件が解決したばかりなのに。
私は畠さんと過ごす楽しい気持ちの合間にも苦い感情がちらちらと顔を出して、息苦しさを覚えた。
そんな私に敏感な畠さんはすぐに反応する。

「やっぱりなにか、あったんじゃない?様子が変だよ」

今すぐにハイヒールの件を話してしまいたいけど、お店の中だから、そうもいかず、私は曖昧に笑って、

「大丈夫です。お店上がったあと、話しますね」

といって、二人で乾杯をした。
1時間ほど飲むと畠さんはちょっと仕事してくるねと席を立った。

「終電上がりだよね?その頃また迎えに来るから」

私は頷いて、出口まで見送った。

その日はフリーのお客様が多くて、私は15分から20分くらいの間隔で色なテーブルに回された。
その中で場内指名してくださったお客様がいた。
目つきの鋭い、かなりデブっチョなおじさんで威圧感が半端ない。
眉尻に3センチくらいの傷がある。最近できたものではなく、肉が盛りあがってる感じから結構前に付いたものなんだろうとわかる。
私は名刺を渡しながら瑠璃果ですと挨拶すると、そのお客様は『佐竹や』と名乗った。

「色んなキャバクラに行ったけど、この店はほんまに美人揃いやなぁ」

関西弁だった。

「佐竹様は関西の方なんですか?」

「大阪や。東京には出張でちょくちょく来るんやけど、東京のキャバ嬢はなんちゅーか質が違うな」

私は大阪どころか関西にも行ったことがないというと、それからはもう、大阪の話が止まらなかった。

「大阪のキャバ嬢も綺麗な子はおるんやけど、東京の子はあれやね、ちょっとスマシとるな。なんちゅーか、気取ったところあるな」

「そうでしょうか?」

「いや、あんたはそうでもないけどな、なんちゅーか、客へのサービス精神が足らんな」

話の中にすぐに「なんちゅーか」が入ってくる。
私は心の中で『なんちゅーかおじさん』とあだ名を付けた。

「サービス精神ですかぁ。例えばどんなことをサービスすればいいんでしょうか?」

「まぁ、あれやね、なんちゅーか、もう少し胸の谷間を見せつけるとか、さきっちょ、ちょびっと触らせてくれるとかな」

そんなサービス、あんたが無理やり女の子にさせてるだけじゃないの?大阪のキャバ嬢さんたちのことは知らないけど、そんなの、大阪も東京も関係なく、単なるセクハラおやじじゃん!と思った。
思ったけれど、口にはしないで、

「佐竹さんてHですねー!胸の谷間ならちょっとサービスで」

と私は脇を引き締めて大袈裟に胸の谷間を作って見せた(そんなことしなくても谷間はあるんだけど)。
そして、すぐに「おしま―い」と言った。

「おお、瑠璃果ちゃん、ノリがええがな。そゆこと、そゆこと。さきっちょ、ツンツンもさせてくれへんか」

図に乗るなぁ!!!とすぐさま席を立ち去りたかったけど、そうもいかないので、

「瑠璃果のサービス精神はこれが限界でーす。許してね」

と甘えた声を出した。



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