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マツクルライトノベル『蝶の沓』2夜

第1章『躓き』2夜



私が初めて恋をした人は優しい人だった。と思っていた。
これはよくある話。
田舎から出てきたばかりの私に出会いなんて早々にあるわけがない。だから、私が恋をしたのは会社の先輩。
野々村靖人。
仕事を覚えるのが遅い私に、職場の人たちは冷たかった。
仕方がないと思った。要領も悪し、愛想笑いも下手だった。
みんなの話の流れに自分のテンポではついていけず、
冗談も通じないと囁かれていた。
そんな中、野々村だけは優しくて、すべてをフォローしてくれた。
会社帰りに「話、聞くよ。酒でも飲もう」と何度か誘われるうちに、
そういう関係になった。
自分でも馬鹿なんじゃないかと思う。
でも、思い描いていた東京はあまりにも孤独だった。
初めての恋。初めての男の人。
私はしがみついた。
のめりこむ。奥の奥まで溶けていく快楽。
でも、知らなかった。本当に知らなかった。
結婚していたなんて。
馬鹿だった。
結婚指輪をしていないだけで、既婚者じゃないと思い込んでいた。奥さんがいるなんて気配がまるでなかった。
毎週、木曜の夜、蜜のような時間に酔いしれて、
そういう関係になって二カ月たった頃、それは突然に届いた。

「内容証明?慰謝料、二百万..。」

同じものが会社にも届いた。
上司に私たちは呼び出された。何が何だか分からず呆然とする私を彼は指差して言った。

「彼女に誘惑されたんです!!」

解雇処分。そして二百万の慰謝料請求。
意味がわからなかった。私は結婚しているのは知らなかった!と訴えたけど、
誰も聞いてくれなかった。騙されたのは私のほうだったのに。
頭の中は真っ白になって、真っ白のまま、いろんな書類にサインさせられていた。
上京する時におばあちゃんが渡してくれた預金通帳の中には丁度同じ金額が記されていた。
でも、これに手をつけたくなかった。
幸い、分割でいいとなったので、とにかく働かなくちゃ!
そう思った時、ネットでナイトワークの求人を見つけた。
信じられない時給だった。

「キャバ嬢...」

これしかないと思った。



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